2013年8月1日木曜日

『「ダメマンション」を買ってはいけない』(藤沢 侑 著) を読んで

現役・三井不動産グループ社員が書いた! 「ダメマンション」を買ってはいけない現役・三井不動産グループ社員が書いた! 「ダメマンション」を買ってはいけない
藤沢 侑

ダイヤモンド社 2007-03-16
売り上げランキング : 68240

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 この本は、まさに三井不動産グループに勤務している現役社員が書かれた著書で、リアリティあるマンション販売の裏事情が多く紹介されています。

 この本では、マンションを「負債を抱えた資産」と定義付けています。1990年代のバブル崩壊後にマンション価格が下落し続けてから、マンションは、資産形成目的というよりは永住目的で購入される方が多くなってきたと言われています。一方、永住目的と言えども、売却する場面もあり得ることから資産性を全く無視して購入することもよくないことから、上記のような定義付けがされています。
 「ダメマンション」は、立地に関するもの(陸の孤島物件、環境劣悪物件)と、建物に関するもの(ひび割れ物件、水漏れ物件、雨漏り物件)とが、紹介されています。

目次は以下の通りです。

第1章 3月竣工物件を買って失敗する人たち
第2章 3月入居開始物件に「ダメマン」が多い理由
第3章 実録「ダメマン」を買うとこんなことになる
第4章 「ダメマン」を買ってしまったらこうしろ
第5章 私の考える「いいマン」
第6章 お買い得な「いいマン」を手に入れる方法
第7章 抽選に勝つ方法
第8章 購入計画が発生したら、即実行の行動プログラム・6つのステップ

 興味をもった内容をいくつか紹介します。
 
 3月竣工物件や3月入居物件は、新生活スタートの時期(4月)に対応して一見ユーザフレンドリーな物件に見えますが、この時期に無理やり合わせるために突貫工事がされやすいとのことです。特に職人の絶対数は決まっているため、この時期に職人不足が深刻化するようです。突貫工事か否かを見抜くには、「完成時期」と、「入居時期」の間の期間がどれくらい空いているかによって判断できるようです。つまり、この期間に、通常は、施工者や施主や検査機関による検査が行われるのですが、この期間が0に設定されている物件などはこれらの検査をまともに行えていないといえます。やこの期間が、1か月以上空いていなければ、それは突貫工事と見てよいようです。また、マンションの出来は、現場の所長に大きく依存するようです。どんなに大きな施工会社であっても、所長に実績がなかれば、ダメマンションになる可能性がありうるということのようです。

 「いいマン」は、10のチェックポイントで確認すべきと紹介されています。つまり、①住所、②最寄駅、③駅からの距離、④買い物便、⑤道路、⑥隣の土地、⑦公園、⑧学区、⑨洪水ハザードマップ、⑩地歴の10つのチェックポイントが挙げられています。ここで注意すべき点は、建物仕様や内装仕様というよりは、マンション建設地そのものの要件が列挙されている点です。建物の豪華さなどもマンションの魅力のひとつですが、それよりもむしろプロは土地の係る要件に比重を高く置いて物件の査定をされているようです。

 私にとって、もっとも衝撃だったのは、マンション抽選の裏事情です。マンションの抽選なんて建前であって、当選すべき方に当選させるからくりが仕組まれているということです。本書によれば、1つの部屋に複数の購入申し込み登録者が出たら必然的に抽選になるのですが、この抽選では、当選させたい方のダミー票を大量に入れ込んで確実にその方を当選させる方法が慣行されているとのことです。例えば、ある部屋に2人の購入申し込み登録者がいたら、通常、その抽選は確立2分の1(50%)の当選率です。しかし、慣行されている抽選方法では、当選させたい方のダミー票(ダミー票は、当該物件の関係者(社員等)の方の名前を借りて複数の登録を行って作るられる)を複数(例えば3標)準備して、当選させたい方の当選率(前例では、当選させたい方の当選確率は5分の4、80%)を絶対的に有利となるように操作するそうです。
 
 
 
 

 最後に、購入計画が発生したら、即実行の行動プログラム・6つのステップは、ステップ0(入居時期が3月でなければならないのかよく考える)、ステップ1(広告でチェックしたいポイントとして、突貫工事か否か、立地の確認)、ステップ2(建設地に行ってチェックする。買い物の便、道路の広さ、交通量、隣地の状況、公園の確認)、ステップ3(間取りの選定の注意点)、ステップ4(ローン返済のチェック。目安は年間のローン返済額が年収の25%以内)、ステップ5(契約前に必ずしよう、4つの質問として、「このマンションの現場所長のいままで担当した物件をすべて教えてください」、「アフターサービスの窓口はどこですか」、「売主の施工管理体制はどうなっていますか」、「立地に関する質問」として「隣の土地に新たに建物を建てる場合、何階まで経建ちますか」、「学区内小学校の評判はどうですか」、「洪水ハザードマップを見せてください」、「建設地の地歴をおしえてください」)、ステップ6(申し込みから抽選の心構えとして、「第一希望のタイプ以外は買わないと宣言しておくこと」)で、構成されます。

 以上の通り、本書には、当事者だからこそ知っているマンション販売の裏事情の多くが、簡潔に纏められて紹介されています。マンションの購入を検討している方にとっては、多くの有益な情報が記載されています。


(2013年9月15日追記)
  『「ダメマンション」を買ってはいけない』(藤沢 侑 著)の続編が発行されているみたいなので、さっそく購入しました。
  昨今の消費税値上げ対策等新しい項目が追記されており、わかりやすい説明がされていました。


 拙著「マンション等の不動産を購入する際に見ておきたい情報」も参考にして頂ければ幸いです。

http://hitooru.blogspot.jp/2013/07/blog-post.html
 
 


現役・三井不動産グループ社員が書いた! やっぱり「ダメマンション」を買ってはいけない現役・三井不動産グループ社員が書いた! やっぱり「ダメマンション」を買ってはいけない
藤沢 侑

ダイヤモンド社 2013-03-23
売り上げランキング : 18335

Amazonで詳しく見る by G-Tools



〈注意事項〉本記事の著作権は、作者(hitooru)にく属します。リンクなどをしていただいても構いませんが、本記事をそのまま転載するようなことを禁止します。ただし、趣旨によっては考慮いたしますので、Twitterなどを介して予めご連絡ください。