2012年3月22日木曜日

東京弁護士会知的財産権法部 創部三十周年記念シンポジウム「特許紛争のより適正な解決の模索」を聴講して

2012年3月10日(土)に、標記のシンポジウムを聴講しました。
 
 標題の通り、東京弁護士会知的財産権法部は、1981年の創部から三十周年を迎えたそうです。1981年といえば、アメリカのレーガン政権下でプロパテント政策が芽生え始めたころです。一方、日本でようやくプロパテント政策が前特許庁長官の荒井寿光氏などにより提唱されるようになったのは1990年半ばですから、東京弁護士会知的財産権法部は、まだまだ知的財産の保護に世の中が注目していない頃に創設されていたことになります。

 スケジュールは、講演の部、第1パネル「我が国における侵害訴訟の活用」、「第2パネル侵害訴訟と審判・審決取消訴訟との調和」の3部構成でした。

 創部30周年の記念シンポジウムらしく、登壇者はそうそうたる方々で、その方々の一言一言に重みがあって大変勉強になりました。

 第1パネルでは、欧米と比較して我が国の特許侵害訴訟が少ない点や、訴訟前や訴訟初期における証拠収集制度が十分でない点や、均等論の適用や意識的除外などを含めてクレーム解釈をどのようにすべきなのかという点や、無効の抗弁のなかでの進歩性の判断や発明の要旨の認定のあり方などについて、議論されました。

 第2パネルでは、侵害訴訟の審理中に特許権に無効があると被告が主張する「無効の抗弁(特許法104条の3)」の運用状況や、特許の有効無効の判断が裁判所と特許庁の双方で食い違うという「ダブルトラック」の問題や、審決取り消し訴訟後の訂正審判に起因する特許庁と裁判所との間で生じる「キャッチボール現象」の問題や、「ダブルトラック」と「キャッチボール現象」の一解決策が盛り込まれた平成23年の特許法等の改正の評価などについて、議論されました。

 いずれのパネルも、1人のモデレータと数名のパネリストが登壇して、モデレータが各パネリストの意見を伺うという形式で進行されました。なお、モデレータは、事前に各パネリストに対してアンケートをとっており、それをまとめた形でパネリングして、 スムーズに議論を進行していました。

 個々の議題に対する個人的な意見をここで述べることは差し控えますが、いずれの議題においても、自然科学のような統一した解はひとつもなく、各パネリストからは論理的思考の下で様々な意見が述べられていたように思います。ちょっとした視点の転換により物事の見え方が大きく正反対に変わってしまうことに改めて気付かされました。

 東京弁護士会知的財産権法部は、今年も研究部会などを開催するようなので、これらの部会にも自己研鑽のため積極的に参画したいと思います。