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2017年7月2日日曜日

須田桃子 著「捏造の科学者」を読んで

捏造の科学者 STAP細胞事件 (文春e-book)捏造の科学者 STAP細胞事件 (文春e-book)
須田桃子

文藝春秋 2014-12-30
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捏造の科学者 STAP細胞事件捏造の科学者 STAP細胞事件
須田 桃子

文藝春秋 2015-01-07
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毎日新聞科学環境部 須田桃子著「捏造の科学者」を読みました。

 この本は、2014年1月30日にSTAP細胞(Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency cells:刺激惹起性多能性獲得細胞)現象に関する2本の論文(主論文「アーティクル」(参照文献1)、第二論文「レター」(参照文献2))を学術雑誌ネイチャーに発表した小保方晴子(理化学研究所CDB(発生・再生科学総合研究所)ユニットリーダー)を中心にした科学者達に焦点を絞って、世紀の捏造事件を取り扱った著書です。

(参照文献1)http://www.nature.com/nature/journal/v505/n7485/full/nature12969.html
著者:小保方晴子(理研)、若山照彦(元理研、山梨大)、笹井俊樹(理研、故人)、小島宏司(ハーバード大学医学大学院)、マーティン・バカンティ(ハーバード大学医学大学院)、チャールズ・バカンティ(ハーバード大学医学大学院)、丹羽仁史(理研)、大和 雅之(東京女子医科大学)
(参照文献2)http://www.nature.com/nature/journal/v505/n7485/full/nature12969.html
著者:小保方晴子(理研)、笹井俊樹(理研、故人)、丹羽仁史(理研)、門田満隆(理研)、Munazah Andrabi(理研)、高田望(理研)、戸頃 美紀子(理研)、寺下愉加里(理研)、米村重信(理研)、チャールズ・バカンティ(ハーバード大学医学大学院)、若山照彦(元理研、山梨大)

 著者は、新聞記者である須田桃子さん。本書を読んだところ、本著者の須田さんは、この事件が起こる前から、iPS細胞(induced pluripotent stem cells)の取材でノーベル医学生理学賞受賞者の山中伸弥氏と交流があったり、上記論文の共同著作者である理研幹部の笹井芳樹氏などとも交流があったようで、あの有名な2014年1月28日火曜日の記者会見前に笹井氏に直接記者会見の参加をすすめられた程の方です。

 2017年6月末の今、2014年1月28日の記者会見(参照画像1)をどれだけの方が覚えていらしゃるでしょうか?論文の筆頭著者の小保方晴子氏が会見の最後の述べた「・・・・夢の若返りも目指していけるのではないかと考えております」という印象の残る言葉をよく覚えています。

参照画像1:https://www.youtube.com/watch?v=Nf6slUvvpLI

 STAP現象は、論文発表後わずか1週間も経たないうちに、論文の画像に不正の疑惑がネット上に広がっていました。

 その後、小保方氏の早稲田大学の博士論文にまで、コピペや画像の不正が指摘され、小保方氏はあの2014年1月28日以来、表舞台からあっという間に消え去りました。

 そして、再び、小保方氏がフラッシュライトを浴びるのは、理研調査委員会の最終報告後の記者会見です。2014年4月9日、大阪市内のホテルで、300人もの記者やカメラマンが参加したとことです。そこで、小保方氏は、堂々と、「STAP細胞はあります。」と言ってのけました。あれだけ期待の星と注目され、あっという間にまるで犯罪者のように扱られても、自分の主張を貫くとは、すごい精神力だなと感じました。

 この会見で、小保方氏は、画像の不正やコピペは、学生の頃から様々な研究室を渡り歩き、研究方法が自己流となってしまい、不勉強で未熟だったと、自己分析しています。

 小保方氏は、2014年4月9日の記者会見でSTAP細胞を200回以上作成したといい、共同著者の笹井氏は、論文不正の指摘に対して、推理小説のような議論で終始してしまうと批判したが、その後、理研内部の上級研究員である遠藤高帆(参照画像2)や、論文共同著作者で若山氏がSTAP現象を解析した結果としてSTAP細胞の存在を否定しうる示唆がされ、ネイチャーはSTAP論文2本を2014年7月2日に撤回しました。

参照画像2:https://www.youtube.com/watch?v=FL9ltGGX1Sk 

 また、早稲田大学は、2014年10月に、小保方氏の博士論文に引用ルール違反や画像切り貼り等の不正があったことを要因として、小保方氏の博士号を1年程度の猶予期間を設けたうえで取り消すと発表しました(参照画像3-1、3-2)。

参照画像3-1:https://www.youtube.com/watch?v=Esk4oZzXhjI
参照画像3-2:https://www.youtube.com/watch?v=GStZ7VHwmHQ
 
 そして、理研の検証実験チーム(リーダー:相沢慎一)は2014年12月18日の記者会見(参照画像3)でSTAP現象を再現できなかったとし、また小保方氏の退職願を受理したとし、幕引きとなりました。

参照画像4:https://www.youtube.com/watch?v=euqDzMi7lNo

 本書では、STASP細胞事件が残したもの(第12章)として、著者は事件発端の要因を分析している。その中で、2002年に米国で発覚したシェーン事件との共通性を論じています。

 シェーン事件とは、ドイツ出身のベル研究所の物理学者ヤン・ヘンドリック・シェーン氏により発表された16本の論文に不正行為が認められ、同氏の63本もの論文が撤回された事件です。

 シェーン氏は、2001年1月に英国科学誌ネイチャーに論文が掲載されたのを皮切りに、高温超電導に関する画期的な成果を有名誌に次々と発表し、科学界の大スターに瞬く間に上りつめました。しかし、世界中の研究チームがシェーン氏の論文追試を試みたが誰も成功できず、ベル研究所の内部告発を発端に外部研究者が捏造を指摘し、世界中から論文捏造の告発を受け、その後、調査委員会が16本の論文に捏造があったと報告するに至りました。
 
 本書では、シェーン事件と次の点で類似していると指摘しています。
・研究の核心部分の実験が若手研究者一人で行われ、シニア研究者がチェック責任を十分に果たさなかった。
 この点については、著者は、若手研究者の小保方氏は基本的に一人で実験をしており、シニア研究者の若山氏、笹井氏、丹羽氏が小保方氏の実験ノートや生データをチェックしていなかったところに、共通点を見出しています。

・ネイチャーをはじめとする一流科学誌の査読システムが論文不正を見抜けなかった。
 この点については、著者は、 一流科学誌といえども、査読自体は該当科学分野で実績のある研究者に査読を依頼し、編集部が査読者のコメントを基に採択を判断するが、査読者自体は不正を見抜くプロではなく、論文掲載の決定権が編集部にあることを指摘する。また、一流誌に載ったからといって、論文の正当性を担保される訳ではなく、ランディ・シェクマン米カルフォルニア大学バークリー校教授(細胞生物学)がSTAP問題について述べた「今回の問題は、インパクトのある研究成果を選りすぐるネイチャーなどの有名誌自身の責任も大きい。事実を偽るような重圧に研究者を追い込む環境を作っている」という言葉を紹介している。

・シェーン氏も小保方氏も、学生時代から不正行為があった。
 この点については、筆者は、両者の論文に実験で得られたのと異なるグラフが用いられ、実験記録に不備があり、生データが保存されておらず、グラフがきれいに見えるようにデータを改竄していることを指摘している。

・組織が置かれた状況の類似性として、論文不正があった頃に、ベル研究所も理研も大幅な研究費の削減があった。
 この点については、筆者は、シェーン氏が活躍した2000年~2002年の頃、ベル研究所はバブル崩壊に伴い、研究費の削減や、研究者のリストラがあり、小保方氏が極光を浴び2014年の頃、理研は当時の民主党政権下で行われた事業仕分けの影響で運営交付金の削減があった点を指摘する。次々と優れた研究成果を発表するシェーン氏はベル研究所にとって「希望の星」であったし、STAP細胞を携えた小保方氏も、やはり理研CDBにとって「希望の星」であった。理研は、STAP細胞の研究に「iPS細胞研究を凌駕する画期的な成果を獲得したいという強い動機」があったとも理研の改革委員会により推測されている。

 以上の通り、本書は、STAP事件の一連の流れを事細かに新聞記者の立場で客観性をもって説明している。しかしながら、結局、STAP細胞はあったのかまでは、確定的な言及はなく、いまだに謎に包まれている。

 最後に、小保方氏と思われるSTAP細胞作製のプロトコルを示したホームページ(参照HP1)を紹介します。このホームページは、2016年3月25日に公開され、挨拶文で小保方氏は、「私の目標は、達成されるべきSTAP細胞の作製の確かな証明を可能にする情報を科学界に提供することです。 したがって、私は、別の科学者がそれらを現実にもたらすことができるように、STAP細胞を作成するためのプロトコルを公開しています。」と述べています。これは、STAP細胞を世界で初めて発見したという精一杯の自負の現れなのかも知れません。
 
 参照HP:https://stap-hope-page.com/
                                                          以上


2017年6月17日土曜日

「あの日」小保方晴子を読んで


あの日あの日
小保方 晴子

講談社 2016-01-29
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 小保方晴子著「あの日」を読みました。

各章は以下の通りです。

はじめに
第1章 研究者への夢
第2章 ボストンのポプラ並木
第3章 スフェア細胞
第4章 アニマル カルス
第5章 思いとかけ離れていく研究
第6章 論文著者間の衝突
第7章 想像をはるかに超える反響
第8章 ハシゴは外された
第9章 私の心は正しくなかったのか
第10章 メディアスクラム
第11章 論文撤回
第12章 仕組まれたES細胞混入ストーリー
第13章 業火
第14章 戦えなかった。戦う術もなかった
第15章 閉ざされた研究者の道

 2014年1月28日の記者会見。日本の理系女子(リケジョ)が中心に研究した成果が、世界的に有名な科学誌「ネイチャー」に掲載されるという、全世界に衝撃的な印象を与えた大ニュースでしたた。
 
 年を越し、正月気分が抜けかかった頃に発表された大ニュースは、瞬く間に日本中、世界中に華々しく広まりました。

 さて、この著書を読むと、小保方氏が、どのような経緯で、STAP現象の研究を始め、論文にまとめて発表し、最終的に論文撤回にまで至り、博士学位のはく奪にまで至ったのかが、小保方氏の視線から詳細に述べられています。

 最初に読んだ心証としては、小保方氏の文章は非常に読みやすく、彼女は文章表現に長けているなあと、感じました。

 肝心な内容についてですが、前半の「第4章 アニマル カルス」あたりまでは、小保方氏が早稲田大学に入学後、強運により様々な研究者と知り合い、自分の目指すべき研究を見極めていく様が描かれています。ただ、研究内容は、わかりやすく丁寧に説明されているものの、専門用語が多く、生物学に疎い者にとっては読み進めることが大変でした。

 「第5章 思いとかけ離れていく研究」の辺りから、若山氏(元理化学研究所CDB研究員)や笹井氏(同)とともに有名科学誌に掲載することを当面の目標とし、小保方氏が周りの研究者に翻弄されていく様が描かれています。この著書によれば、論文投稿は、小保方氏の要望というより、むしろ若山氏や笹井氏の強い要望によって実現されたように思えます。

 「第6章 論文著者間の衝突」の125頁には、「笹井先生はそんな私を見て、『でもこの論文さえ終われば、若山さんのご奉公も終わり、自分のやりたかった研究を思い切りすることができる。・・・』」と記載されており、 小保方氏は将来の自分の研究環境を確保するために、上司である笹井氏や元上司である若山氏に論文執筆という形で奉公することになります。

 アーティクル論文は、バカンティ氏(ハーバード大学医学大学院教授)をシニアオーサーとして、レター論文は、若山氏をシニアオーサーとして、投稿されました。シニアオーサーとは、研究論文において最も栄誉ある立場であって、論文の最後に載るラストオーサーでもある(121頁)。つまり、小保方氏は、責任者ではなかったのです。

 しかしながら、「第7章 想像をはるかに超える反響」で述べられているように、小保方氏は、2014年1月28日の記者会見を境に大々的にメディアに露出され、あたかもリケジョである彼女に全責任があるかのような心象を全世界に与えました。

 「第8章 ハシゴは外された」に記載されるように、論文発表から1週間もたたないうちに、小保方氏の過去の論文に悪質な研究不正が疑われ(142頁、148頁)、ネイチャー誌の掲載されたSTAP現象の論文にも疑義がかかるのにも時間はかからりませんでした(146頁)。

 「第9章 私の心は正しくなかったのか」以降、小保方氏は、ネイチャー誌の第一執筆者として、論文の全責任を負うかのように、理研内部、メディア、そしてテレビや新聞を通じてニュースをみる世界中の国民から、疑いの目で見られ、追い込まれていきます。著書によれば、小保方氏は、一定期間、反論や検証実験の機会を理研から与えられず、組織的に大きな責任が彼女に押し付けられた形となりました。

 そして、「第11章 論文撤回」に記載されているように、ネイチャー誌に投稿された2つの論文は、とうとう論文撤回という結論に至ります。さらには、「第15章 閉ざされた研究者の道」に記載されているように、その後、小保方氏は、早稲田大学で取得した博士学位までははく奪されてしまいました。

 本書を読んで思ったことは、結局、真実は、分からないということでした。ただ、論文掲載に向かう各研究者の行動の様子などからは、大学や国の研究機関では、権威を得るために、売名行為が行われているということは分かりました。その一方で、当初美味しいと思われたネタに不備が見つかった途端に、その不備を排除するのに容赦ない処置が施されることもわかりました。権威をえるために、周囲の人が美味しいネタに寄り付くことは、国会議員であっても、一企業であっても、どの世界でもあることだから、不思議なことではありませんが、真の現象を追及するという科学分野でこのようなことが行われていたことには大きな衝撃を受けました。


2014年1月28日記者会見
https://www.youtube.com/watch?v=Nf6slUvvpLI

2014年4月9日記者会見
https://www.youtube.com/watch?v=Nbr6WrhJCW4


  
 



 
 

2015年7月26日日曜日

コンピュータ帝国の興亡 ロバート・X・クリンジリー(著) 藪 暁彦(訳)

コンピュータ帝国の興亡―覇者たちの神話と内幕〈上〉 (Ascii books)コンピュータ帝国の興亡―覇者たちの神話と内幕〈上〉 (Ascii books)
ロバート・X. クリンジリー Robert X. Cringely

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コンピュータ帝国の興亡―覇者たちの神話と内幕〈下〉 (Ascii books)コンピュータ帝国の興亡―覇者たちの神話と内幕〈下〉 (Ascii books)
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 コンピュータ帝国の興亡 ロバート・X・クリンジリー(著) 藪 暁彦(訳)を読みました。 

 20年以上も前に発行された古い本ですが、今日のコンピュータ産業がどのように形成されてきたかを知るには、大変参考になります。

 著者のロバート・X・クリンジリーは、1953年米国オハイオ州生まれのコンピュータ業界で著名なジャーナリストで、コンピュータ雑誌「InfoWorld」でコラムを出筆されていました。

 この本では、特に1980年代のビル・ゲイツや、デビッド・パッカードとウィリアム・ヒューレットや、スティーブ・ジョブスなどの若き日の起業に向けた情熱を、熱く語っています。

 コンピュータ産業において、マイクロソフトやアップルがどのようにして生き残ってきたのか、ロータス123で有名なロータスがどのようにして消え去っていったのか等の歴史を、主要な人物間のやり取りを交えて詳しく教えてくれます。
 
 とくに、ハッカーやコンピュータおたくと呼ばれた若者達が、世界一のハードウエアメーカのIBMを翻弄させる成り行きは、非常に興味深く読むことが出来ました。

 著者は、最後に、「アメリカのコンピュータ産業に残されるのは、高性能な半導体とソフトウエアだけという状況がやって来る」と述べています。現に、今生き残っているのは、アップルやマイクロソフトのように、高いコンセプトを示すソフトウエアと、最先端のハードウエアを提供する会社だけである。

 一方で、著者は、マイクロソフトに対しては、結局、最新のソフトも全てMS-DOSの添加物であり、いわば古い技術革新の波を抱えたまま新しい波に乗り移ることを繰り返しているので、いずれその負担が大きくなり、失敗することになると、警告しています。そのような日が近年に来るかも知れません。そして、新たなビジネスチャンスに向けて、第二、第三のビル・ゲイツやティーブ・ジョブスが既にこの世界のどこかで生まれ、熱い情熱を持って企業を企てているのかも知れません。

〈注意事項〉本記事の著作権は、作者(hitooru)にく属します。リンクなどをしていただいても構いませんが、本記事をそのまま転載するようなことを禁止します。ただし、趣旨によっては考慮いたしますので、Twitterなどを介して予めご連絡ください。
 

 

2015年3月19日木曜日

藤沢秀行 著「人生の大局をどう読むか」

 藤沢秀行 著「人生の大局をどう読むか」を読みました。

人生の大局をどう読むか―盤上に人生を刻む勝負師が語る「生き方の極意」 (知的生きかた文庫)人生の大局をどう読むか―盤上に人生を刻む勝負師が語る「生き方の極意」 (知的生きかた文庫)
藤沢 秀行

三笠書房 2003-01
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 背表紙には、「あなたの”人間の厚み”が出てくる本」とあり、興味をもって一気に読みました。

 藤沢秀行氏は、プロの囲碁棋士で、9歳から日本棋院に入門して以来、数々のタイトルをすべて第1期で獲得されてきた名士です。

 この藤沢氏の魅力は、競輪で借金まみれになったり、泥酔で醜態をさらすなど、飄々として自由奔放な行動に相反して、勝負どころではばっちりと勝ち進んできているところかと思います。藤沢氏は、碁であれ、人生であれ、絶えず「最善手」を求めることを人生哲学としていると述べています。そこで、必要なのは、「厚み」であって、その「厚み」とは「目先の利を捨てて、将来に備えて力をためること」と藤沢氏はいいます。そして、いつであっても、「今が始まり」、「もう遅いということはない」と常に前向きな姿勢を貫き通しています。

 この本を読んで得たものは大変多かったと思います。自分の器の小ささを感じつつ、あまり細かいことにくよくよせずに「今が始まり」を思い、前を向いて生きるしかないんだなと教えられました。

 藤沢氏は、この本以外にまだまだ沢山の本を執筆しているようですので、書店や図書館で手にとって読みふけたいですと思うところです。

2014年11月24日月曜日

「久世塾」 久世光彦 共著



久世塾久世塾
久世 光彦 内館 牧子 竹山 洋 青柳 祐美子 大石 静

平凡社 2007-02
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 「久世塾[くせじゅく]」(久世光彦(くせてるひこ) 共著)を読んでみました。

 「久世塾」とは、2000年7月に、たった1回のみ実施されたドラマ作家育成塾で、第二の向田邦子を作ろうというキャッチフレーズでスタートしたものです。
 
 本書には次のような説明があります。
 「久世塾は永年、独自の演出で数多くのテレビドラマを手がけてきた演出家、久世光彦を塾長とし、久世式方法論によるドラマ作家の育成をはかろうとするものである。従って、通常のドラマ『作家育成教室』とは明確に差別化をはかり、実験的、創造的綬業を最大の目的とする」(272頁)

 久世光彦氏は(1935年4月19日 - 2006年3月2日)は、TBSに入社後、演出家、プロデューサとして、「時間ですよ」等のテレドラマを制作し、小説家、実業家(テレビ制作会社「株式会社カノックス」創業者)としても活躍されました(参考)。
 

 久世塾は、2000年7月~10月の3カ月間で毎週土曜日に全12回、約24万円の受講料、120名以上の塾生(3クラス)参加という内容で実施されました。授業は、午前に、青柳由美子、糸井重里、内館牧子、大石静、金子成人、小林亜星、竹山洋、山元清多の第一線の講師が2時間の講義を行い、午後に、担当講師により脚本の基礎を教える講義が行われました(272-274頁)。

 本書には、このうち、午前の講義内容が中心に、久世塾長の朝礼の様子等も含めて掲載されています。

 本書の各著者は、どの方も第一線でご活躍されていることから、大変な苦労をなされて、今の地位を築かれています。脚本作成の世界では、他人との差別化を図るために自分らしさを出さなければならない反面、全国の視聴者やテレビドラマ制作に関わる多くの関係者の意見をも踏まえなけらばならないことが、各人の経験を含めて丁寧に説明されていました。
 私は、特許出願のための書類(明細書、図面、特許請求の範囲等)を作成しています。この点、業界は全く異なりますが、日々、文書を書くことでは業として共通します。特許出願のための各書類の作成は、基本的には、発明者により発想された発明を文書化することにより行います。ただ、明細書等は、特許庁に出願したのち原則1年半後に公開されますし、特許請求の範囲は特許の権利範囲を示す権利書しての役割を果たします。
  このため、単に、発明者の言葉通りに明細書等を作成しても不十分で、少なくとも同じ技術に関わる者(いわゆる当業者と呼ばれます)が明細書等の内容を読んで、技術内容や権利内容を理解できるように、明細書等を作成しなければなりません。さらには、例えば、発明者の言葉を残しつつも、公に公開するために必要な丁寧な説明を付加する等、他の明細書等を書くことを業とする者との差別化も図らないといけません。こういった意味では、脚本家育成のための本に、共通点を見出すことができ、大変勉強になりました。改めて日々精進しないといけないと身を引きしめた次第です。

2014年10月6日月曜日

「あぶく銭師たちよ!-昭和虚人伝」佐野眞一 著

あぶく銭師たちよ!―昭和虚人伝 (ちくま文庫)あぶく銭師たちよ!―昭和虚人伝 (ちくま文庫)
佐野 眞一

筑摩書房 1999-01
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 「あぶく銭師たちよ!-昭和虚人伝」佐野眞一 著 を読みました。


 佐野 眞一 氏は、1947年(昭和22年)1月29日生まれのジャーナリスト、ノンフィクション作家です。主な受賞歴は、大宅壮一ノンフィクション賞(1997年)、第31回講談社ノンフィクション (2009年)。代表作としては、「東電OL殺人事件」などがあります。

 この「あぶく銭師たちよ!-昭和虚人伝」は、昭和のバブル時に、巨額の富を掴んだ6人の男女を特集しています。

 リクルート創業者の江副浩正、地上げ屋の早坂多太吉、大殺界占い師の細木数子、フジサンケイグループの鹿内春雄、虚飾のデザイナー斎藤都世子のそれぞれの実像をあぶり出しています。

 佐野氏の著書の特徴的なところは、徹底した取材に基づく詳細な事実説明と、複数の話題を時系列でなく同時に進行させる複線的な記述法かと思います。本書でも、随所に、複雑に絡み合う人間関係を円滑に捌き切り、非常に分かりやすく編集されています。

 最後に、佐野氏が「文庫版のためのあとがき」に寄せた「バブルの時代」について、引用します。『昭和末期から平成にかけて日本列島を襲った「バブルの時代」とは、人間の生活の中心に現金が据えられ、金の前では人の命もなにもかもが羽毛のように軽くなった時代だった。あの時代、政治家から官僚、経営者から庶民にいたるまで拝金思想に凝り固まった。「清貧の思想」などというつもりはさらさらないが、貧しさにも「功徳」があることを、かつての日本人は本能的に知っていた。家に金がなければ泥棒にも入られる心配もなく、戸じまりする必要もない。日本人はついこの前までそのことを知悉し、かつ実践していたのである。』『「バブルの時代」とは、一億日本人が熱病のような拝金思想に冒された、狂った一ページだった。』
 
 
佐野眞一氏の他の著書
津波と原発津波と原発
佐野 眞一

講談社 2011-06-17
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東電OL殺人事件 (新潮文庫)東電OL殺人事件 (新潮文庫)
佐野 眞一

新潮社 2003-08
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巨怪伝〈上〉―正力松太郎と影武者たちの一世紀 (文春文庫)巨怪伝〈上〉―正力松太郎と影武者たちの一世紀 (文春文庫)
佐野 眞一

文藝春秋 2000-05
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巨怪伝〈下〉―正力松太郎と影武者たちの一世紀 (文春文庫)巨怪伝〈下〉―正力松太郎と影武者たちの一世紀 (文春文庫)
佐野 眞一

文藝春秋 2000-05
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誰も書けなかった石原慎太郎 (講談社文庫)誰も書けなかった石原慎太郎 (講談社文庫)
佐野 眞一

講談社 2009-01-15
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2014年9月23日火曜日

岸田 秀 著「唯幻論大全」

唯幻論大全 岸田精神分析40年の集大成唯幻論大全 岸田精神分析40年の集大成
岸田秀

飛鳥新社 2013-01-25
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 岸田 秀 著「唯幻論大全」を読みました。
岸田氏の精神分析40年の集大成として複数の著書を1冊に凝縮した全989頁の超大作です。

 岸田 秀 氏は、1933年香川県善通寺市生まれで、精神分析の立場に立つ思想家です。岸田氏は、人間は本能が壊れた動物であり、幻想の世界に迷い込んでいるとの唯幻論に基づいて、自我、家族、国家、歴史、セックスなど、人間にかかわる様々な現象を解明しようとしています。

 唯幻論は、岸田氏の言葉を借りれば、「フロイト理論をいくらか拡大し、人間は、性本能だけでなく、すべての本能が壊れて、現実を見失い、幻想の世界に迷い込んだ動物であるとぼ結論に達し、その前提に立って、動物と違って地球上で変なことばかりしているこの人類をいくらかでも理解しようと考えた考え」です。

 つまり、唯幻論は、実在論、実体論の虚妄性や虚偽性を暴こうとする論理かと思います。地球上の全ての人間活動を1つの論理で説明するこの論理は、岸田氏の著書『ものぐさ精神分析』が出版された1970年代後半から、全くブレがなく、一貫しており、非常に説得力があるものでした。

 本書のテーマは、以下の通りです。
 第一章 自我論
 第二章 歴史論
 第三章 セックス論

 岸田氏の他の著書は例えば以下の通り。



ものぐさ精神分析 (中公文庫)ものぐさ精神分析 (中公文庫)
岸田 秀

中央公論社 1996-01
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絞り出し ものぐさ精神分析絞り出し ものぐさ精神分析
岸田 秀

青土社 2014-05-16
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性的唯幻論序説―「やられる」セックスはもういらない (文春文庫)性的唯幻論序説―「やられる」セックスはもういらない (文春文庫)
岸田 秀

文藝春秋 2008-09-03
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唯幻論物語 (文春新書)唯幻論物語 (文春新書)
岸田 秀

文藝春秋 2005-08-19
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歴史を精神分析する (中公文庫)歴史を精神分析する (中公文庫)
岸田 秀

中央公論新社 2007-06
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続 ものぐさ精神分析 (中公文庫)続 ものぐさ精神分析 (中公文庫)
岸田 秀

中央公論社 1996-01
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ものぐさ精神分析 (岸田秀コレクション)ものぐさ精神分析 (岸田秀コレクション)
岸田秀

株式会社 青土社 1992-05-31
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2014年6月14日土曜日

「海賊とよばれた男」百田尚樹 著

 「海賊とよばれた男」百田尚樹 著を読みました。


海賊とよばれた男 上海賊とよばれた男 上
百田 尚樹

講談社 2012-07-12
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海賊とよばれた男 下海賊とよばれた男 下
百田 尚樹

講談社 2012-07-12
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海賊とよばれた男(上) (講談社文庫)海賊とよばれた男(上) (講談社文庫)
百田 尚樹

講談社 2014-07-16
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海賊とよばれた男(下) (講談社文庫)海賊とよばれた男(下) (講談社文庫)
百田 尚樹

講談社 2014-07-16
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 著者の百田尚樹は、1956年生まれの作家で、過去には関西テレビの「探偵!ナイトスクープ」のチーフ構成作家を担当されていました。「永遠の0(ゼロ)」で小説家デビューをし、その後「BOX」、「風の中のマリア」、「モンスター」等多数の小説を執筆されてきました。

 「海賊とよばれた男」は、2013年に「本屋大賞」を受賞した作品で、出光興産の創業者である「出光左三」をモデルにした小説です。「出光左三」は小説の中では「国岡鐡造」という主人公として登場します。この小説では、田岡が田岡商店を創業してから大企業に発展するまでの話と、田岡の生涯の歩みと、整理した形で、提供してくれます。

 米国の石油会社(セブンシスターズ)との戦いや、日本国内の石油配給公団との戦いや、日章丸事件など、様々な障壁を乗り越えてきた田岡商店の成長過程と、この成長の背景で随所に現れる田岡の「人間尊重」を信念とした人間性が、この小説に分かりやすく丁寧に描かれており、私は寝る間も惜しんでこの小説に読み更けました。

 「出光左三」に深く興味をもったので、早速「出光左三」の著書を図書館で予約してみました。以下にいくつかの本を紹介します。




 

 


 

マルクスが日本に生まれていたらマルクスが日本に生まれていたら
出光佐三

春秋社 2013-07-20
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「人の世界」と「物の世界」「人の世界」と「物の世界」
出光佐三

春秋社 2014-02-22
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働く人の資本主義 〈新版〉働く人の資本主義 〈新版〉
出光佐三

春秋社 2013-10-18
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永遠の日本―2600年と3000年 出光佐三対談集 (1975年)永遠の日本―2600年と3000年 出光佐三対談集 (1975年)
出光 佐三

平凡社教育産業センター 平凡社 1975
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働く人の資本主義働く人の資本主義
出光佐三

春秋社 2013-10-15
売り上げランキング : 39650

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人間尊重五十年 (1962年)人間尊重五十年 (1962年)
出光 佐三 出光興産株式会社

春秋社 1962
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出光佐三語録 (PHP文庫)出光佐三語録 (PHP文庫)
木本 正次

PHP研究所 2013-02-05
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評伝 出光佐三 ─ 士魂商才の軌跡評伝 出光佐三 ─ 士魂商才の軌跡
高倉 秀二

プレジデント社 2014-01-28
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小説出光佐三―燃える男の肖像 (1982年)小説出光佐三―燃える男の肖像 (1982年)
木本 正次

にっかん書房 1982-02
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難にありて人を切らず―快商・出光佐三の生涯難にありて人を切らず―快商・出光佐三の生涯
水木 楊

PHP研究所 2003-08
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出光佐三 魂の言葉―互譲の心と日本人出光佐三 魂の言葉―互譲の心と日本人
滝口 凡夫

海竜社 2012-05
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2014年5月18日日曜日

TBSドラマ「半沢直樹」の原作本(オレたちバブル入行組、オレたち花のバブル組:池井戸 潤 著)を読んで

 
オレたちバブル入行組 (文春文庫)オレたちバブル入行組 (文春文庫)
池井戸 潤

文藝春秋 2007-12-06
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オレたち花のバブル組 (文春文庫)オレたち花のバブル組 (文春文庫)
池井戸 潤

文藝春秋 2010-12-03
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半沢直樹 -ディレクターズカット版- DVD-BOX半沢直樹 -ディレクターズカット版- DVD-BOX

TCエンタテインメント 2013-12-26
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半沢直樹 -ディレクターズカット版- Blu-ray BOX半沢直樹 -ディレクターズカット版- Blu-ray BOX

TCエンタテインメント 2013-12-26
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 『倍返しだ!』の決めセリフで世の中のサラリーマンを興奮させたTBS日曜劇場「半沢直樹」(2013年7月7日-2013年9月22日)の原作本2冊を読みました。

 まず1冊目は、「オレたちバブル入行組」(池井戸 潤 著)です。
 この「オレたちバブル入行組」では、 主人公「半沢直樹」の就職活動にまで、さかのぼります。半沢は、慶応大学を卒業し、まさにバブルで狂喜していた最中の1988年に大手都市銀行「産業中央銀行」 に入行します。2002年には、「産業中央銀行」は、「 東京第一銀行」と合併し、「東京中央銀行」として生まれ変わりますが、旧産業中央派と旧東京第一派の間で激しい派閥争いが繰り広げられていました。
 そんな中、半沢は、順当な昇進を経て、大阪西支店の融資課長の肩書を手にしていました。半沢は、融資課長として慎重な審査を進めていたにも拘らず、これまで取引のない「西大阪スチール」への融資(無担保で5億円)が支店長の浅野の鶴の一声で行われたことによって、たちまち苦境に陥ります。
 「西大阪スチール」は、粉飾決済発覚で倒産し、社長の東田は雲隠れし、半沢は5億円の回収に奔走します。
 一方、支店長の浅田は、上層部に根回しして、全責任を半沢に負わせる策を講じます。これに対抗して、半沢が、東田の隠し資産を見つけこれを回収するに至るまで、浅田支店長との間で熾烈な戦いを行います。

 そして、2冊目は、「オレたち花のバブル組」(池井戸 潤 著)です。
 半沢は、大阪西支店の融資課長時代での実績を買われ、東京本店の営業第二部次長にまで昇進しています。
 そこで、半沢は、200億円の融資をしたにもかかわらず120億円もの運用損失を出した伊勢島ホテルを、元々伊勢島ホテルの担当で運用損失を見抜けなかった法人部の尻拭いをする形で、担当することになります。
 また、同時進行して、金融庁の検査が東京中央銀行に入ることになり、200億円の回収可否によっては、東京中央銀行の収益に大きな影響を与え、株価暴落ともなれば、中野渡頭取が退陣にまで追い込まれることになります。
 半沢は、伊勢島ホテルへの200億円の融資に至るまでの背景には、伊勢島ホテルが同族経営のしがらみに縛られていることや、融資時に伊勢島ホテル担当の京橋支店支店長の貝瀬が融資前に伊勢島ホテルの経営悪化を知りながらこの情報をもみ消したことや、京橋支店の歴代支店長に大和田常務やその側近の岸川が名を連ね、伊勢島ホテルへの融資に関与している可能性があったこと等、様々な疑惑の事情があることを見つけ、これらの分厚い障壁に立ち向かい戦っていきます。

 
 これら2冊を通して読んだのですが、意外にも決めセリフの「倍返し!」は、、「オレたちバブル入行組」には一度も出てこず、「オレたち花のバブル組」にも3回しか出てきません。

 1つ目は、半沢が、金融庁検査で見られてはならない重要秘密書類を疎開させ、後々には京橋支店を吊るしあげにすることを決断したことを、同期の渡真利に言い放った言葉です。
 
 「基本は性善説。しかし、やられたら、倍返し-。」(137頁)

 2つ目は、京橋支店支店の貝瀬が半沢との交渉で大和田常務の名を出してまで自身の保身を貫こうとした交渉の最中に、半沢が貝瀬に言い放った言葉です。
 「オレは、基本は性善説だ。だが、やられたら、倍返し-」(294頁)

 そして、3つ目は、大和田常務の不正を取締役会で議題に上げてこれを暴く直前に、半沢が、自身の銀行での立場や人生を考えつつも、大和田常務や側近の岸川の不正が半沢にとって売られたケンカであると結論付けて、自身の信条として心に抱いた言葉です。
 「やられたら倍にしてやり返す。その信条にしたがって頭取宛てに上表した報告書は、まさに半沢の信念に基づくものだった。結果を恐れて何もしないという選択肢は、半沢の中には存在しない。」(345頁)

 「倍返しだ!」の言葉に象徴されるように、本シリーズでは、善悪が明快であり、悪を徹底的につぶす痛快さが、私を含めて会社生活での様々な葛藤に頭を悩ませている会社員に、快感を与えてくれます。

 
 
 
 すでに、「半沢直樹」シリーズの続編第3弾として、「ロスジェネの逆襲」が発行されています。さらに、続編第4弾として「銀翼のイカロス」が「週刊ダイヤモンド」に連載され最終話を迎え、単行本の発行待ちとなっています(2014年5月18日現在)。また、テレビドラマも、すでに続編の放映が検討されているとのことで、ますます半沢直樹の今後に目が離せません。




〈注意事項〉本記事の著作権は、作者(hitooru)にく属します。リンクなどをしていただいても構いませんが、本記事をそのまま転載するようなことを禁止します。ただし、趣旨によっては考慮いたしますので、Twitterなどを介して予めご連絡ください。


 
 
ロスジェネの逆襲ロスジェネの逆襲
池井戸 潤

ダイヤモンド社 2012-06-29
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週刊 ダイヤモンド 2013年 5/25号 [雑誌]週刊 ダイヤモンド 2013年 5/25号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2013-05-20
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2014年1月26日日曜日

「Googleのの脳みそ」変革者の思考回路(三宅伸吾 著)

「Googleの脳みそ」変革者の思考回路(三宅伸吾 著)を読みました。

Googleの脳みそ―変革者たちの思考回路Googleの脳みそ―変革者たちの思考回路
三宅 伸吾

日本経済新聞出版社 2011-07-26
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 著者の三宅伸吾は、1961年生まれの政治家です。現在は、自由民主党所属の参議院議員(1期、2013年7月29日〰)です。ただ、本書を発行するころ(2011年7月)の時点では、日本経済新聞社の編集委員(証券部兼政治部)を務めていました。

 本書は、書名「Googleのの脳みそ」から想定されるような、単なるGoogle考案のシステムやアルゴリズムの紹介をするものではありませんでした。
 
本書は、我が国では、社会の仕組みや我々の行動を縛るルールや既得権益などにより、資本経済下での様々な経済活動が制限される等の我が国特有の経済問題を提示するとともに、これらの問題を解決し、日本経済が成長するための処方箋を提言するものでした。

 Googleの例を言えば、端的にいえば次の通りです。
 すなわち、我が国の著作権法が著作権者(主として権利団体)を保護を厚く保護する規定を設けていたがために、我が国の検索事業者の活動が暗黙に制限されてきました。ウイニー事件の判決結果などは、刑事罰を恐れるがゆえに、我が国の有能な技術者の研究意欲を無用にそぐ結果を招きました。その間に、米国の検索事業者であるGoogleがインターネット上で人の著作物の内容を検索できるシステムを構築してしまい、我が国の検索事業は米国に対して大きく水をあけられてしまったという問題点が提示されています。Googleは、「正面突破戦略」として、「許可をもらうより謝る方が楽だ」という発想、つまり「邪悪でなく、社会にとってよいことだと思えば果敢に挑戦するのが正義である」との確信に支えられた発想をもって、事業活動をした結果、革新的な事業モデルで急伸しました。
 これに対しては、いわゆるフェアユース規定を米国法と同様に我が国の著作権法に新たに規定するという議論がなされてきた。
 しかし、結局、既得権者(権利団体)の猛烈な反発を考慮し、米国流のフェアユース規定を設けるのではなく、既存の個別制限規定を緩和する法改正がなされたに過ぎない状況です。筆者は、フェアユース規定が、社会に貢献しようとする企業人や法律家が正面突破戦略などを通じ、自ら創りだすような発想を日本社会に根付かせる起爆剤となるといいます。そして、せめて米法並みのフェアユース規定を、我が国の著作権法の改正を通じ早期に導入すべきと論じてます。

 そのほか、本書では、1票の格差問題や、村上ファンド事件、ライブドア粉飾事件、日本航空の再生処理、東日本大震災により生じた原子力発電所の事故処理等の経済問題にも触れられています。

 以下の本書で気になった文言を列挙します。
 
 

「自分の周りの雰囲気を変える努力というのは、実は個人でできる経済政策である」(東京大学准教授・柳川範之)(321頁)

「貧困への処方箋は雇用を生み高い給与を与えることだ。これは企業家精神が発揮されてのみ達成できる。政府の役割は雇用の創出ではなく、雇用を生む企業家にインセンティブを与えることにある」(インフォシス・テクノロジーズ社創業者のナラヤナ・ムルティー)(325頁)

『脳みそが元気なら通常、したくない嫌な競争も風景が変わってくる。地道な改善を積み重ねることで100メートルを人より速く走る体力と手法を身につけるのも、競争の素晴らしい一断面である。しかし、100メートル・レースより、もっと面白い協議を考案して1位になる、場合によってはエンターテイメント・ビジネスとして発展させ、世界を驚かせるという発想もあっていい。カイゼンとイノベーションの違いがここにある。「既存の枠やステージを乗り越える」競争である。(三宅伸吾)』(334-335頁)

「人生は暗いものではない。何か悪いことがあると、その反動でよくなっていくものです。嫌なことはいいことの始まりだ。明るい未来というのは、今の苦しみを乗り越えないと、手に入らないのです。今を楽しんで、どうして明るい未来が来るのですか?」(日本電産社長・永守重信)(335頁)

「すべての現象は新基軸をやろうとする者と既得権保有者の戦いに本質があり、この戦いはダーティでだ。」(経営共創基盤CEO・冨山和彦)(339頁)

「世界を変えたければ、あなたが変わらなければならないーマハトマ・ガンジー」(345頁)

以上

2014年1月2日木曜日

「人生がときめく片づけの魔法」(近藤 麻理恵(こんどう まりえ) 著)

人生がときめく片づけの魔法


 
人生がときめく片づけの魔法
近藤 麻理恵

サンマーク出版 2010-12-27
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 「人生がときめく片づけの魔法」(近藤 麻理恵(こんどう まりえ) 著)を読みました。この本は、Amazonの2012年年間ランキング(和書総合)で第13位というベストセラー本です(参照:AmazonのHP)。

 著者は、「片づけコンサルト」(正式には、整理収納コンサルト(特定非営利活動法人・一般社団法人ハウスキーピング協会認定)という資格らしいです。(著者のブログを参照))という片づけの専門家で、普段は顧客の自宅に出向いて整理収納のレッスンをされています。著書の紹介によりますと、彼女は、幼稚園年長から主婦雑誌(ESSE、オレンジページ等)を愛読し、小学生の頃には花嫁修業的に掃除、片づけ、料理、裁縫等の家事をこなしてきました。そして、中学3年生のときに「『捨てる』技術」という本を読んで片づけに開眼し、大学2年生のときに片づけのコンサルティング業務を開始されています(本書の巻末参照)。

 本書は、「一度片づけたら、絶対に元に戻らない方法」、つまりリバウンドを絶対にしない片づけをテーマに、単に片づけのやり方を列挙するのではなく、何のために片づけをして、片づけをすればその後の人生に対してどんな効果を与えるかを熱く伝えてくれます。つまり、巷のHOW TO本ではなく、自己啓発の要素も多く含んだ本である思います。

 片づけの流れは、ものを選別して捨てる→ものの収納先を決めて収納する、というもので、普通に考えればわかることです。

 ただ、この著者の片づけ方法の大きな特徴で、他に見られないところは、「捨てる」か否かの判断基準です。著者は、「捨てる」か否か判断基準として、ものを手にとってみて「ときめくか、ときめかないか」を採用しています。つまり、必要なものと必要でないものは人によって異なりますし、ものに対する愛着も人それぞれです。現時点で片づけられていない人は、その人にとって必要でないものを多く抱え込んでいるはずで、それらの不要なものを「ときめき」の有無で判断しようとするものです。

 私も実践してみると、いかに、不要でときめかない多くのものに囲まれていたのかを思い知らされます。例えば、自己啓発のために買い込んだ英語や資格の本、知財業務から離れる友人から頂いた本業に関係する本、もう15年前に買った時代遅れのブルーの高級ブランドダブルスーツ、5年以上前の正月に購入した福袋に入っていた衣類、過去に受講したセミナー資料、大学院の研究論文の執筆過程の書類、引っ越しで使用した段ボール、化粧品購入時に付属でついていた試供品、何年も前の年賀状、何の病気で病院で処方してもらったか分からない薬類等。これらは、私にとって今となっては全くときめかないものたちでしたので、躊躇なく捨てることができました。

 収納については、著者は、本書にて、まず、すべてのものの定位置を決めることを提案してます。つまり、すべての持参品が収まるべき住所を付ける作業を重視しています。住所不定のものが一つでもあると、部屋のなかでものが散らかる可能性が一気に高くなることを指摘しています。収納は、同じカテゴリーのものは1か所に集めて収納し、分散させないことが、重要であるとのこと。

 私も実践してみました。私は、引き出し付きクリアケース9個、引き出し無クリアケース2個を有していました。以前は、引き出し無のクリアケースを、冬物と夏物を入れ替えるために使用していました。しかし、本書が指摘するように、一度、引き出し無のクリアケースに入れてトランクルームなどに収納してしまうと、次の季節がきてもそのクリアケースは開けられなくなってしまっていました。その結果、ここ数年、全く手に取らない衣類が大量に。中には改めてときめいた衣類もありましたが、それ以外は今となっては古めかしいものとなっていましたので、ここでも大量の衣類を処分しました。その結果、2つの引き出し無のクリアケースは不要となりました。衣類のたたみ方も、すべての衣類が、たたみ終わった後に四角形にして立てるように効率用収納することに心がけました。例えば、Tシャツ類は以下のようにうまく収まりました。

















 
 最後に、本書では、片づけが完了することによって、人生観をも変えられることが、語られています。著者は、ものを捨てられない原因として、「過去に対する執着」「未来に対する不安」を挙げています。このような原因にとらえられているときは、自分にとって必要なものや求めているものが見えていない状態で、それゆえに不要なものをますます増やしてしまい、物理的にも精神的にもいらないものに埋もれてしまうことを警告しています。

 私は、これまで何度も、今もっているものの充足性を深く考えずに、ついつい衝動買いや、消耗品を無駄に買いだめをしてしまったりしていました。これは、確かに、自分の所有物に向き合うことをせずに、うやむやにしてきた結果だと痛感します。
 

  本書を手にとり片づけをしたことによって、私にとって必要なものが見えてきたような気がします。そして、本書が伝えているように、片づけは、単に私にとって必要な所有物の選別だけに足りず、それらの所有物に囲まれて生活している私自身の考え方(本当にやりたいこと等)に変化をもたらすものに思えるようになりました。
 今後、以前よりも片づけられたこの部屋で、私自身の価値観がどう変わっていくのかを楽しみながら、日々の生活をより充実させて過ごしていきたいを思います。

〈注意事項〉本記事の著作権は、作者(hitooru)にく属します。リンクなどをしていただいても構いませんが、本記事をそのまま転載するようなことを禁止します。ただし、趣旨によっては考慮いたしますので、Twitterなどを介して予めご連絡ください。

なお、本書のパート2等もすでに出版されているようですので、以下に紹介します。



 
人生がときめく片づけの魔法2人生がときめく片づけの魔法2
近藤麻理恵

サンマーク出版 2012-10-09
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片づけコンサルタント近藤麻理恵プロデュース 人生がときめく片づけの魔法クラシック片づけコンサルタント近藤麻理恵プロデュース 人生がときめく片づけの魔法クラシック
V.A.

avex CLASSICS 2012-11-06
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