2014年11月24日月曜日

「久世塾」 久世光彦 共著



久世塾久世塾
久世 光彦 内館 牧子 竹山 洋 青柳 祐美子 大石 静

平凡社 2007-02
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 「久世塾[くせじゅく]」(久世光彦(くせてるひこ) 共著)を読んでみました。

 「久世塾」とは、2000年7月に、たった1回のみ実施されたドラマ作家育成塾で、第二の向田邦子を作ろうというキャッチフレーズでスタートしたものです。
 
 本書には次のような説明があります。
 「久世塾は永年、独自の演出で数多くのテレビドラマを手がけてきた演出家、久世光彦を塾長とし、久世式方法論によるドラマ作家の育成をはかろうとするものである。従って、通常のドラマ『作家育成教室』とは明確に差別化をはかり、実験的、創造的綬業を最大の目的とする」(272頁)

 久世光彦氏は(1935年4月19日 - 2006年3月2日)は、TBSに入社後、演出家、プロデューサとして、「時間ですよ」等のテレドラマを制作し、小説家、実業家(テレビ制作会社「株式会社カノックス」創業者)としても活躍されました(参考)。
 

 久世塾は、2000年7月~10月の3カ月間で毎週土曜日に全12回、約24万円の受講料、120名以上の塾生(3クラス)参加という内容で実施されました。授業は、午前に、青柳由美子、糸井重里、内館牧子、大石静、金子成人、小林亜星、竹山洋、山元清多の第一線の講師が2時間の講義を行い、午後に、担当講師により脚本の基礎を教える講義が行われました(272-274頁)。

 本書には、このうち、午前の講義内容が中心に、久世塾長の朝礼の様子等も含めて掲載されています。

 本書の各著者は、どの方も第一線でご活躍されていることから、大変な苦労をなされて、今の地位を築かれています。脚本作成の世界では、他人との差別化を図るために自分らしさを出さなければならない反面、全国の視聴者やテレビドラマ制作に関わる多くの関係者の意見をも踏まえなけらばならないことが、各人の経験を含めて丁寧に説明されていました。
 私は、特許出願のための書類(明細書、図面、特許請求の範囲等)を作成しています。この点、業界は全く異なりますが、日々、文書を書くことでは業として共通します。特許出願のための各書類の作成は、基本的には、発明者により発想された発明を文書化することにより行います。ただ、明細書等は、特許庁に出願したのち原則1年半後に公開されますし、特許請求の範囲は特許の権利範囲を示す権利書しての役割を果たします。
  このため、単に、発明者の言葉通りに明細書等を作成しても不十分で、少なくとも同じ技術に関わる者(いわゆる当業者と呼ばれます)が明細書等の内容を読んで、技術内容や権利内容を理解できるように、明細書等を作成しなければなりません。さらには、例えば、発明者の言葉を残しつつも、公に公開するために必要な丁寧な説明を付加する等、他の明細書等を書くことを業とする者との差別化も図らないといけません。こういった意味では、脚本家育成のための本に、共通点を見出すことができ、大変勉強になりました。改めて日々精進しないといけないと身を引きしめた次第です。