2014年1月26日日曜日

「Googleのの脳みそ」変革者の思考回路(三宅伸吾 著)

「Googleの脳みそ」変革者の思考回路(三宅伸吾 著)を読みました。

Googleの脳みそ―変革者たちの思考回路Googleの脳みそ―変革者たちの思考回路
三宅 伸吾

日本経済新聞出版社 2011-07-26
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 著者の三宅伸吾は、1961年生まれの政治家です。現在は、自由民主党所属の参議院議員(1期、2013年7月29日〰)です。ただ、本書を発行するころ(2011年7月)の時点では、日本経済新聞社の編集委員(証券部兼政治部)を務めていました。

 本書は、書名「Googleのの脳みそ」から想定されるような、単なるGoogle考案のシステムやアルゴリズムの紹介をするものではありませんでした。
 
本書は、我が国では、社会の仕組みや我々の行動を縛るルールや既得権益などにより、資本経済下での様々な経済活動が制限される等の我が国特有の経済問題を提示するとともに、これらの問題を解決し、日本経済が成長するための処方箋を提言するものでした。

 Googleの例を言えば、端的にいえば次の通りです。
 すなわち、我が国の著作権法が著作権者(主として権利団体)を保護を厚く保護する規定を設けていたがために、我が国の検索事業者の活動が暗黙に制限されてきました。ウイニー事件の判決結果などは、刑事罰を恐れるがゆえに、我が国の有能な技術者の研究意欲を無用にそぐ結果を招きました。その間に、米国の検索事業者であるGoogleがインターネット上で人の著作物の内容を検索できるシステムを構築してしまい、我が国の検索事業は米国に対して大きく水をあけられてしまったという問題点が提示されています。Googleは、「正面突破戦略」として、「許可をもらうより謝る方が楽だ」という発想、つまり「邪悪でなく、社会にとってよいことだと思えば果敢に挑戦するのが正義である」との確信に支えられた発想をもって、事業活動をした結果、革新的な事業モデルで急伸しました。
 これに対しては、いわゆるフェアユース規定を米国法と同様に我が国の著作権法に新たに規定するという議論がなされてきた。
 しかし、結局、既得権者(権利団体)の猛烈な反発を考慮し、米国流のフェアユース規定を設けるのではなく、既存の個別制限規定を緩和する法改正がなされたに過ぎない状況です。筆者は、フェアユース規定が、社会に貢献しようとする企業人や法律家が正面突破戦略などを通じ、自ら創りだすような発想を日本社会に根付かせる起爆剤となるといいます。そして、せめて米法並みのフェアユース規定を、我が国の著作権法の改正を通じ早期に導入すべきと論じてます。

 そのほか、本書では、1票の格差問題や、村上ファンド事件、ライブドア粉飾事件、日本航空の再生処理、東日本大震災により生じた原子力発電所の事故処理等の経済問題にも触れられています。

 以下の本書で気になった文言を列挙します。
 
 

「自分の周りの雰囲気を変える努力というのは、実は個人でできる経済政策である」(東京大学准教授・柳川範之)(321頁)

「貧困への処方箋は雇用を生み高い給与を与えることだ。これは企業家精神が発揮されてのみ達成できる。政府の役割は雇用の創出ではなく、雇用を生む企業家にインセンティブを与えることにある」(インフォシス・テクノロジーズ社創業者のナラヤナ・ムルティー)(325頁)

『脳みそが元気なら通常、したくない嫌な競争も風景が変わってくる。地道な改善を積み重ねることで100メートルを人より速く走る体力と手法を身につけるのも、競争の素晴らしい一断面である。しかし、100メートル・レースより、もっと面白い協議を考案して1位になる、場合によってはエンターテイメント・ビジネスとして発展させ、世界を驚かせるという発想もあっていい。カイゼンとイノベーションの違いがここにある。「既存の枠やステージを乗り越える」競争である。(三宅伸吾)』(334-335頁)

「人生は暗いものではない。何か悪いことがあると、その反動でよくなっていくものです。嫌なことはいいことの始まりだ。明るい未来というのは、今の苦しみを乗り越えないと、手に入らないのです。今を楽しんで、どうして明るい未来が来るのですか?」(日本電産社長・永守重信)(335頁)

「すべての現象は新基軸をやろうとする者と既得権保有者の戦いに本質があり、この戦いはダーティでだ。」(経営共創基盤CEO・冨山和彦)(339頁)

「世界を変えたければ、あなたが変わらなければならないーマハトマ・ガンジー」(345頁)

以上